2009年全米オープン決勝-”ホークアイ”に納得のいかないフェデラーの怒り!

2006年3月。
テニス界では、ある大きな変革をもたらす出来事があった。


その出来事とは、「ホークアイの導入」
そう、今では”チャレンジシステム”でおなじみとなった判定補助システムのことである。

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このホークアイというのは、球の軌道や位置などを複数のカメラにより解析し、瞬時にコンピュータ処理された画像を場内に表示するという画期的なシステムであった。

これまでも、審判の目が追いついていないがために「判定ミスではないか」と選手が主審やラインズマンに抗議をする場面も度々見られてきたことだ。

特に男子のようにラリーが速い場合などは、審判の力量によってはバッドケースな判定も多く、”人間が判断していることだからしょうがないし、判定は簡単に覆らない”、と半ばあきらめつつも、判定に納得のいかない選手が主審に詰め寄る光景も少なからずどの大会でも見られたし、またその光景を楽しむファンがいたのも事実である。


それが、コンピュータの力を使い、審判で判断できなかったものを多角的な映像と数値から分析して「より確実な判定を確認する方法」として、今ではツアーの下位の大会でもホークアイ、つまりチャレンジシステムを導入する事が一般的となった。


さて、そんな「機械の判断」を取り入れることに反対していた選手が何人か存在していたが、その中の一人は、当時絶対王者として男子テニス界に君臨していた「ロジャー・フェデラー」だった。


導入当初から、「テニスが機械的になり、選手の個性がなくなる。人間味がなくなるよ。」と発言していたフェデラー。
人間による判定の正誤はともかく、例え誤審であったとしても、そしてその結果選手が審判に詰め寄ろうとも、その人間が作り出す流れというものも、テニスというスポーツには欠かせない魅力の一つである、と考えていたようだ。


そして、ホークアイの導入から3年。


そのプレースタイルから紳士的なイメージのあったフェデラーは、導入に反対の意を唱えていたこの「ホークアイ」によって、主審に対する暴言による罰金を科せられることになってしまうのであった・・・。


ファンにとっても衝撃を受けたその場所とは、アメリカ/ニューヨーク。
それも、2004年から5年間もの間、チャンピオンの座に君臨していた全米オープンの舞台。
6連覇がかかる2009年も決勝戦に進んでいたフェデラーは、グランドスラム初タイトルを狙うユアン・マーティン・デル=ポトロと対戦した。


1stセットを順調に6-3で終えたフェデラーは、2ndセットも有利な形で試合を運んでいく。

セットカウント5-4とフェデラーリードで迎えた第10ゲームはフェデラーのサービスゲーム。
30-30でデル=ポトロの放ったフォアハンドのダウンザラインを「アウト」と宣告されたデル=ポトロは、速攻で「チャレンジ」を要求した。

対するフェデラーは、完全にアウトだと思ったようだが、事の成り行きを見守る。
すると・・・・・。


映し出された映像は、ぎりぎりのところでボールがラインに乗っていたのだ。


これに対し、フェデラーは納得がいかないようで、ボールが落ちたところの跡をラケットで差して、「アウトじゃないか!」と主審にアピールする。


ただ、もちろん判定は覆らない。


このシーン、実は何回スロー再生を見てもよく分からない。
アウトのような気もするし、ホークアイが見せてくれたようにラインに少しだけ乗っかったのかもしれない。


ただ、判定は”in”。
このデル=ポトロのショットがアウトであれば、40-30とフェデラーの「Serving for the set」を迎えていただけに、彼も怒りが納まらなかったのだろう。
ましてや、あれほど導入に懐疑的だったホークアイによって1,2セット連取を阻まれようとしているのだ。


逆に30-40とデル=ポトロにブレークポイントを握られたフェデラーは、結局このゲームを落とし、タイブレイクの末、2ndセットをデル=ポトロに譲る形となった。



そして、問題のシーンが起こったのは3rdセット。
4-4で迎えた第9ゲーム、フェデラーのサービスゲーム。
セットポイントを取ったフェデラーのサーブを打ち返したデル=ポトロのリターンがアウトを宣告された時だった。


動画内の○○は、「Sh*t」や「f*cking」など放送禁止用語を連発している。


このシーン、デル=ポトロのチャレンジ要求は結果的に失敗で終わるのだが、要はチャレンジ要求するまでの時間が掛かりすぎだ、とフェデラーは怒っているのだ。
自分にはチャレンジ要求まで2秒しか与えられないのに、デル=ポトロには10秒も与えているじゃないか、と。
ルールはあるのか?!
俺に黙れと言うな!
言いたいときには俺だって言うんだ!


と、相当興奮してまくし立て、怒りが納まらない様子のフェデラー。
“こんなものを導入するからだ”と言う裏面にある感情も垣間見せながら・・・。

このフェデラーの怒りの声は、当然主審を挟んで反対側で休んでいたデル=ポトロの耳にも届いていて、この3rdセットは動揺したのか次の第10ゲームでミスを連発したデル=ポトロがブレークされてしまったのだ。

セットカウント2-1でフェデラー優勢となって、4thセットへと突入していく。




・・・・・
導入当初は懐疑的な意見も聞かれたり、フェデラーのように否定的な意見を吐かれたホークアイだったが、現在では各スポーツでこのホークアイによるチャレンジシステムやビデオ判定などが導入されようとしている。


ただ、フェデラーの言葉もまた一つプロスポーツの世界に身を置いている、そして一流のショーマンとしての言葉として我々観客もしっかりと胸に刻んでおきたい。

プレーしている側も観客として見ている側も、時には誤審により有利な判定を受けたチームや選手の側も、「誰が見ても明らかに今の判定はおかしい!」ということはよくあることだ。

でも、誤審を喰らったチームや選手が結果として勝負事に黒が付くのか・・・
というと、必ずしもそうではない。

時には、その逆境を跳ね返して勝利を手にすることもあるし、判定にも運にも見放されたけれども最後まであきらめないそのひたむきなプレーに観客が心奪われることも多くの場面であるのだ。


あれから、また月日が経ち、ホークアイが初めて導入された「ナスダックオープン」は、現在「ソニーエリクソン・オープン」と名前を変え、テニスの春の祭典として盛り上がりを見せている。

そのホークアイも各ツアー大会で当然のように導入されている。

今では、1セットに3回のチャレンジ権が与えられていて、どのタイミングで使用するか、という”かけひき”を選手も観客も楽しめるようになってきたのではないだろうか。


フェデラーは、今でもホークアイという「機械」には、慎重な姿勢を見せているかもしれない。


でも、あの2009年の全米オープン決勝で、”ここぞ”と言う時に放たれたデル=ポトロの「チャレンジコール」がなければ・・・・・。



2009年の全米オープンをフルセットの末、デル=ポトロが制し、フェデラーの大会6連覇を阻むことはできなかったかもしれないのだ。


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